イヤイヤ期の対応について ― 現場で使える具体的な工夫と声かけ ―
「靴は履きたくない!」「ごはんいらない!」「着替えない!」——保育の現場でも、1~3歳頃の子どもたちから毎日のように聞こえてくる“イヤ!”の声。いわゆる「イヤイヤ期」です。この時期は子どもの自我が芽生え、自分の気持ちを外に出す練習をしている大切な時期でもあります。とはいえ、大人にとってはストレスがたまりやすい時期。そこで、今回は私たち保育士が日々実践している、具体的な対応方法をいくつかご紹介します。
1. 「○○しよう」ではなく「どっちにする?」作戦
対応例:着替えを拒否する場合
「お着替えしようね」と言っても、「イヤ!」と返されることは日常茶飯事。そんな時は、「このシャツとこのシャツ、どっちにする?」と選ばせることで、「自分で決めた」という満足感が得られ、スムーズに動いてくれることがよくあります。
ポイント:
選択肢は2つまでにすること。多すぎると逆に迷って混乱します。
2. 事前の“見通し”を持たせる
対応例:お片づけを嫌がる場合
急に「片づけるよ」と言っても「イヤ!」となることが多いです。そこで有効なのが“予告”です。
「あと3回やってからお片づけしようね」と伝えておくと、気持ちの準備ができて切り替えやすくなります。
実践ワザ:
タイマーを使って「ピピッとなったらおしまいにしようね」と“音”で区切りをつけるのも効果的です。
3. 気持ちを代弁して、共感する
対応例:靴を履かずに泣き出したとき
子どもが床に寝転がって「イヤ!」と泣いているとき、大人の都合で「早くして!」と言いたくなりますが、まずは「イヤだったね」「まだ遊びたかったんだね」と気持ちを代弁してあげましょう。
結果として、「わかってくれた」と安心し、気持ちが切り替わることがあります。
4. 遊びに変える工夫をする
対応例:手を洗いたがらない子どもに
手洗いを嫌がる場合、「おててさんがバイキンマンにねらわれてるよ〜!やっつけにいこう!」と“ごっこ遊び”のようにして誘うと、楽しい気持ちになりやすく、自分から動き出すことも。
他にも:
ちょっとユーモアを加えると効果的です。逆に、真剣に必要性について説明してみると、案外素直に動いてくれたりするケースも。
5. やることを“分解”して少しずつ促す
対応例:園の支度をすべて拒否するとき
「靴履いて、帽子かぶって、リュック背負って!」と一度に言われると、子どもは混乱します。そんなときは、「まず靴下だけ履こうか」「じゃあ次に帽子ね」と分けて伝えることで、ハードルが下がります。
大事なのは:
「全部やらせよう」と思わず、「ひとつできたらOK」の気持ちで接すること。
6. イヤイヤも“発達”ととらえて見守る心
子どもが癇癪を起こしたとき、つい周囲の目が気になったり、「こんなにイヤがるのはうちの子だけ?」と不安になる保護者の方もいます。でも実際には、多くの子どもたちが同じように葛藤を繰り返しながら、自分の気持ちの出し方や折り合いのつけ方を学んでいます。
保育士も日々心がけているのは、
・子どもの「イヤ!」の裏にある気持ちを想像する
・失敗しても「次はこうしてみよう」と前向きに捉える
・子どもが「安心できる大人の存在」を感じられるよう関わる
おわりに
イヤイヤ期は、親や保育士にとって“試されているような”時期ですが、実は子ども自身も一生懸命に「心の成長」を遂げている大切な時間です。正解は一つではなく、毎日が試行錯誤。それでも、子どもの心に寄り添う小さな工夫が、毎日の暮らしに大きな変化を生みます。
「今日は一歩進めた」「昨日より泣かずにできた」——そんな小さな成長を一緒に喜び合いながら、イヤイヤ期を前向きに乗り越えていきましょう。
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